2022年春季低温工学・超電導学会 セッション報告

6月20日(月)
A会場

REBCO線材作製・評価 1A-a01-05 座長 寺西 亮

1A-a01 土井(京大)らは、{100}<001>Cu集合組織上に導電性中間層を介してREBCO層を形成させる新構造のテープ線材において、常伝導領域発生時のCuテープへの電流回避時に対して
導電性中間層に求められる抵抗率を有限要素法にて計算した結果を報告した。
1A-a02 内田(京大)らは、上記テープ線材において導電性中間層としてSrTiO3のSrにLaを0.05 mol%置換した Sr0.95La0.05TiO3を選定し、PLD法によるReel-to-Reelシステムにて中間層を
連続成膜した結果を示し、結晶性が良く、1 cm2あたりの積層方向の抵抗率で10-5Ωレベルが得られることを報告した。
1A-a03 山本(名大)らは、Fujikura社とSuperOx社の線材を試料に用い、それぞれ安定化Ag層除去後、および除去後に1 μm厚までAg層を堆積した際のREBCO層のIc非対称性を比較し、REBCO
膜上にAg層を堆積することによって非対称性が向上することを報告した。
1A-a04 高・木須(九大)らは、REBCO線材の磁気計測において機械学習に基づく超解像技術の導入によりホール素子配列で測定した低解像度の磁気像を高解像度化できることを報告し、低い
解像度の磁気像から高解像度の磁気像を生成できる新しい技術を示した。
1A-a05 SOMJAIJAROEN(九大)らは、REBCO長尺線材のリール式磁気顕微鏡観察について深層学習による物体検出を導入して数千枚の磁気観察像における局所Ic低下部位を検出する手法を報告し、
サイズや発生頻度などの局所欠陥の統計性に関する情報を取得できることを示した。


SCSCケーブル 1A-p01-06 座長 東川 甲平

1A-p01:重政(京大)らは、二層スパイラル銅複合多芯薄膜線材の磁化損失測定について発表した。特に二層にすることで損失は増えておらず、そのメカニズムについて議論が交わされた。
1A-p02:祖父江(京大)らは、GFRPインサートデュワーを用いた超伝導線の磁化損失測定について発表した。磁界印可用マグネットとは別に試料を冷却できるようになり、より低温での評価を
行えるシステムとなった。これに関連して、今後は結合損失の温度依存性も評価できるようになるとのことである。
1A-p03:許(京大)らは、スパイラル導体における銅コアへの分流がクエンチ・保護特性に与える影響について発表した。分流により熱的安定性は大幅に向上しており、コアに銅のような低抵抗
材料を使用することの意義を明らかとした。
1A-p04:曽我部(京大)らは、SCSCケーブルにおける磁化損失のケーブル形状依存性について発表した。詳細な3次元解析ができるようになり、この結果これまでは予測していなかったような
特性がいくつか示されていた。原因や解釈は引き続き検討するとのことである。計算時間や同ケーブルで変更し得るパラメータに関する質問があった。
1A-p05:曽我部(京大)らは、層間偏流を考慮したスパイラル導体の全損失解析手法について報告した。電気回路により各素線の電流を導き、それを交流損失計算の境界条件に用いるということ
であった。交流損失計算の結果を電気回路の計算にフィードバックする必要がないのかという質問があったが、影響しそうなのはフロー損なので、現状では大きな影響はなさそうということであった。
1A-p06:李(京大)らは、SCSCケーブルで構成されるスキャニング電磁石の概念設計について報告した。従来装置よりも大幅な小型化が見込まれるものの、ACロスがまだ大きく、この点の工夫が
必要ということであった。




6月20日(月)
B会場

超電導応用(1) 1B-a01-06 座長 野村 新一

超電導応用(I)のセッションでは6件の発表があり、非接触給電、誘導加熱、磁気浮上、超電導現象の可視化シミュレーションの多岐に亘る研究発表が行われ聴講者から多数の質問があり
活発な議論が行われた。参加者はB会場がほぼ満席、オンライン参加は20名ぐらいであった。
1B-a01:關谷(山梨大)氏よりREBCO線材を用いたワイヤレス電力伝送システムの伝送効率に関する報告があった。理論計算とQ値の測定結果から、伝送距離80 cmのとき銅コイルの伝送効率
が約28%となるのに対してREBCOコイルでは約90%となる結果が報告された。
1B-a02:有田(九工大)氏より超電導現象の可視化シミュレーション技術として、超電導体内の電界特性をリザバーコンピューティングに適用することの有用性に関して報告された。
1B-a03:井上(岡山大)氏より鉄道用非接触給電システムの電力伝送特性について車両側のHTSコイルとレール側のコイル間の位置ずれによる伝送電力の低下防止策として、正方形コイル
形状の可能性について交流損失や伝送効率の計算結果に基づき報告された。
1B-a04:伊藤(テラル,新潟大)氏よりHTSマグネットを用いたアルミビレットの磁気加熱装置の定格400 kW付近での加熱試験結果について報告された。アルミビレット表面温度測定より加熱
状況は把握できているが、今後は内部の温度測定を行い最適な加熱制御パターンを検討するという報告があった。
1B-a05:中村(上智大)氏よりHTSレーストラックコイル、HTSバルク材、鉄レールで構成された磁気浮上システムの解析結果が報告された。バルク材の磁場遮蔽効果によって円形コイルから
レーストラックコイルにすることで浮上力の改善が期待できるものの更なる浮上力向上が課題であるとの報告があった。
1B-a06:宮崎(鉄道総研)氏より超電導フライホイール蓄電装置で利用される超電導磁気ベアリング(SMB)の回転安定性について、試験結果に基づき浮上力と上限回転数の関係が示され、
回転不安定要素とその対策に関して報告された。


REBCO薄膜・バルク作製 1B-p01-06 座長 舩木 修平

1B-p01:松本(NIMS)らは、交流損失低減に向けた極細多芯化技術として、STO基板上にリソグラフィによってパターニングしたμmオーダー幅の極細Zr上にPLD-YBCOを成膜した結果を報告
した。Zr上のYBCOは無配向となり、MOからもZr部分では超伝導特性が低いことが確認された。また、弱超伝導部分は合金系LTSのような安定化にも寄与する可能性もあるとのことだった。
1B-p02:藤本(九大)らは、1B-p01:松本らと同様にZrを細線状にパターニングしたSTO基板上にMOD法でYBCOを成膜した結果を報告した。MOD法でもPLD法と同様にZr上のYBCOの特性が
劣化し、MOから細線化が可能であった。XRDの結果から極細Zrを含む膜は、含まない膜に比べて積分ピーク強度が72%減になっていたが、これはZr上の弱超伝導YBCOが厚さ方向に広がって
いる可能性があるためとのことだった。
1B-p03:作間(山梨大)らは、実用化されている受信用ではなく、送信用のフィルタに応用可能な耐電力特性に優れた高Jc、低RsなREBCO薄膜の成膜を試みた。スピンコート法により25 mm角の
Al2O3基板上にTFA-MOD法で200 nm-t成膜したY0.77Gd0.23BCOは、面内均一性に優れた高Tc、高Jc薄膜であったが、Rsは実用化されているフィルタのREBCOに比べて高かった。これはTc
Jcを犠牲にしてでも表面状態に特化した薄膜にすることで改善する可能性があるとのことだった。また、出力がJcの2乗に比例するとして計算した結果は100 W級であったが、第3高調波で評価
すべきであるとの議論がされた。
1B-p04:寺西(九大)らは、電力機器への応用を目指したYBCO磁気シールド材料の作製結果を報告した。これまではYBCO粉末をPET樹脂に含侵していたが、パーマロイにMOD法でYBCOを堆積
させることで、より高い磁気シールド効果が得られた。これはMOD法による結晶の数密度向上による効果であるとのことであったが、パーマロイ自体の熱処理による磁気的特性の変化も考慮すべき
との議論がされた。また、厚膜化することで特性が劣化していたが、これは厚膜試料のTcが低いことが原因であると考察された。
1B-p05:元木(青学大)らは、Single-Direction Melt Growth (SDMG) 法によって作製したリング状、角柱状のDyBCOバルクの作製と捕捉磁場を評価した結果を報告した。SDMG法を用いることで、
リング状、角柱状などの自由な形状のバルクの作製が可能となるだけでなく、角柱状では隣り合うバルク同士が超伝導接合されているとのことだった。さらに、還元ポストアニールにより捕捉磁場が
2倍になることや、可逆性があることが示された。また質疑の中では、CeO2はDy211を微細化するために用いていること、ボイドはAg添加やO2中作製で減少できるであろうこと、Jc-B分布は径方向
にはないが上下方向にはTSMG法と同様に存在することが議論された。
1B-p06:三輪(青学大)らは、REBCOバルクの大型化を目的として、DyBCOバルクの界面に包晶温度の低いYBCOを入れ熱処理することで接合させた試料の、界面角度に対する捕捉磁場、Jc-B
SEMの変化を報告した。補足磁場の結果から、界面がc軸方向に対して25°、29°の場合は接合可能であったが、17°の場合には接合できなかった。17°で接合できなかったのは面積が小さいことが
原因であり、SEMの結果からはポアが存在し、界面に均質なYBCO結晶が成長していないとのことだった。

Nb3Sn反応基礎 1B-p04-06 座長 斉藤 一功

二件の講演があった。内容はバルク磁石応用と線材高Jc化に向けた基礎的研究。講演の概要は下記の通り。
1B-p07 小山田(岩手大) :Nb3Snをバルク磁石として応用することを目指した研究。製法はNb3Sn粉末の加圧焼結。捕捉磁場向上の課題はバルクの密度向上。これまでにこの方法によりバルク
充填率80%で3 T級(10 K)の磁場を捕捉できることを示してきた。焼結時の加圧条件を従来の50 MPaから100 MPaまで増やして特性を評価した。今回の発表では、焼結時の圧力を増加させる
ことにより充填率の向上を図り、結果としての捕捉磁場強度の向上を狙った。100 MPaの加圧では狙い通り充填率が88%まで向上しJcも80%近く上昇。これによりΦ20 mmのNb3Snバルクでは3.4 T
以上の捕獲磁場が期待できる。
1B-p08 伴野(NIMS) :ブロンズ法Nb3Sn線材では、スズにTiを添加することでBc2Jcが向上する。一方、内部スズ法線材ではTiを添加する金属(Nb, Sn, Cu)とNb3Sn生成の関係に関する
現象解明はこれまでにほとんど行われていない。本研究では内部スズ法の単芯線材でTi添加金属を変えた試料を作成しNb3Sn生成との添加場所の関係を調べた。結果としてSnやCuにおいては界面に
NbCuSnTiの4元化合物が生成され、これがSnの拡散障壁になっていることが分かった。一方Nbに添加した場合にはこうした4元化合物はみられず結果として生成するNb3Snの量が多くなっていた。
こうしたことから内部スズ法線材においては、NbへのTi添加が望ましいと結論した。


6月20日(月)
C会場

計測・低温流体 1C-a01-04 座長 槙田 康博

1件キャンセルがあり、3件の発表になった。
1C-a1:上野(東芝エネルギーシステムズ)等は、極低温真空条件下における接触熱抵抗の測定結果を報告した。接触鉄抵抗は伝導冷却設計の中で数多く存在する伝熱要素であ3るが、改めて
条件を整えて実測すると、温度依存性があるなど興味がわく結果を示されていた。
1C-3a:大矢(京大)等は、30 K@950 kPaの液体水素で浸漬冷却されたBSCCOコイルに過電流を流し、常伝導転移や熱暴走の発生の状況を報告した。熱暴走まで至ったコイルでは気泡滞留による
熱伝達不足が生じたものと思われる。
1C-4a武田(神戸大)等は、横振動を受けて傾いた液面が水平に戻るまでの減衰状況についてシミュレーションした結果を報告した。液体窒素、水素及びヘリウムについてシミュレーションをし、
減衰定数は動粘性係数が主要因子であることが示されていた。シミュレーションと測定結果は液体窒素や液体水素ではよく一致しているが、液体ヘリウムやヘリウムIIでは差が大きくなっていた。


冷却・冷凍 1C-p01-04 座長 三戸 利行

本セッションでは、冷却・冷凍に関する4件の研究成果の発表がなされた。
最初に「1C-p01:平野(NIFS)」から、磁気遮蔽方式を用いた磁気冷凍の可能性について、各種パラメータを変化させた場合の冷却性能の解析的な考察結果が報告された。続いて
「1C-p02:朱(同済大)」から、ディスプレーサパルス管冷凍機のハイブリッドモデルについて報告された。次に「1C-p03:保川(富士電機)」から、パルスチューブ冷凍機のアフター
クーラー構成が冷凍機性能に与える影響について実験的に評価した結果が報告された。続いて「1C-p04:増山(大嶋商船高専)」から、サイズの異なる4K-GM冷凍機3台のコールドヘッドを
2 kWクラスの圧縮機と組み合わせた場合の冷凍能力の変化について実験的に評価した結果が報告された。


超電導・低抵抗接続(1) 1C-p05-07 座長 筑本 知子

1C-p05:伊藤 悟(東北大)らは、鉄道用高温超伝導き電ケーブルのオンサイト接合方法として、インジウム圧接の条件検討に関して、接合時間短縮化のため、事前処理のBSCCO線の研磨および
インジウム箔の酸洗いの省略の可否について検討した結果を報告し、これらのプロセスの省略により接合抵抗がほとんど影響されないことを示した。また円形ケーブルの接合について、線材を
スパイラル配置した場合と直線配置した場合について事前処理の影響を比較し、どちらの場合も二つの事前処理を省略しても接合抵抗への影響は許容範囲であることを確認した。
1C-p06: 中井 優亨(青学大)らは1.3 GHz NMRコイルの上部空間での高強度Bi2223線材(DI-BSSCO Type HT-NX)の超伝導接合プロセスについて、コイル製造現場での接合作業手順の
確立のため、まず段ボール製の模擬ジョイントプレートを用いて底面加熱炉と小型プレス機(小ラム径)による接合条件最適化を行い、一軸プレスの圧力を低くすること、および熱処理温度を従来より
高い830℃とすることで接合Ic約90 A(77K、s.f.)を得た。この条件を踏まえて、FRP製のジョイントプレートを用いた接合部の作製を行った。今の所上段プレートでは高い接合Icは得られて
いないが、下段プレートでは約80 AのIc値が得られている。
1C-p07:稲葉勇人(青学大)らは同じく高強度Bi2223線材の超伝導接合プロセスの最適化について、接合界面に用いる中間圧膜層の金属組成比と焼成温度について検討した結果を報告した。
金属組成については、Pb-richの場合に接合Icが向上し、組成分析ではBi2223が主相で得られていることが確認された。また、焼成温度については、825℃では接合Icが低下したが、組織観察
から粒成長が促進されて中間層に空隙が発生していることが確認されたため、中間一軸プレス+二次焼成で改善することがわかった。以上の最適化により、Ic〜100 A(77K,s.f)が得られた。




6月20日(月)
P会場 ポスターセッションI

循環冷却 1P-p01-02 座長 仲井 浩孝

循環冷却セッションの発表は1件のみであった。
1P-p01:野口(東工大)らは、高温超伝導コイルを効率的に冷却するシステムとして、冷媒を循環させるクライオファンおよび磁気冷凍システムを組み合わせた、GM冷凍機による循環冷却
システムを検討している。数値解析を行った結果、コイルの温度が上昇する場合と低下する場合があることが分かり、磁気冷凍システムに適切な磁性材料の種類や質量を選択することに
よってコイル温度の低下が可能であることが示唆された。また、磁気冷凍システムを導入するメリットは、多くの入熱に耐えられることや唐突な温度上昇を抑えられることなどである。


HTS電流輸送特性 1P-p03-06 座長 柁川 一弘

1P-p03:大倉(中部大)らは、超電導ケーブルを構成する1〜5本のDI-BSCCOテープ線に電流を通電した際の周方向磁場分布をホール素子を用いて測定し、テープ線が周方向に均等に配置
されていることや2本通電したときの磁場分布が個別の場合の単純和でほぼ与えられることを明らかとした。
1P-p04:酒井(福岡工大)らは、機械的に切断加工されたREBCO線材の捕捉磁場分布を走査型ホール素子磁気顕微鏡を用いて測定し、エネルギー分散型X線分光器搭載走査電子顕微鏡も併用
して、1 mm幅線材の切断端において最大200 μm程度の超電導層の剥離を観測した。
1P-p05:田中(福岡工大)らは、高電界下におけるREBCO線材の電流電圧特性を測定するため、銅板をはんだ接合することで焼損せずに過電流通電が可能になるとともに、パルス通電法に
おけるパルス幅を従来の2 sから10 msに短縮した。
1P-p06:髙橋(福岡工大)らは、銅板をはんだ接合したREBCO線材における電流電圧特性の実験結果を等価回路モデルに基づく数値解析により良好に再現するとともに、有限要素解析も実施
して接続抵抗の違いによる電流分布の変化を考察した。


安定性・保護(1) 1P-p07-12 座長 藤田 真司

1P-p07:太田(早大)らは、無絶縁(NI)-REBCOコイルにおける遮蔽電流と径方向電流を考慮した解析の計算時間短縮を目的として、コイルを径方向に分割した等価回路による解析プログラム
の検証結果について報告した。定量的には従来の解析プログラムに劣るものの、解析時間は短縮された。
1P-p08:内山(早大)らは、NI-REBCOコイルの遮蔽電流磁場低減手法としてオーバーシュート法およびプラトーの導入をした場合の発生磁場の時間依存性を解析した。実験結果と比較して、
定量的には少し誤差を生じたが定量的には一致する結果であり、オーバーシュート+プラトーの有効性が示された。
1P-p09:天野(早大)らは、NI-REBCOコイルにおいてターン間に接触不良領域がある場合の解析結果について報告した。劣化部がある場合、隣接ターンと接触不良があり、安定化銅が薄い場合
には熱暴走を生じる結果であった。一方、コイル内に線材間の接続部がある場合は、接続抵抗による発熱では熱暴走しない結果であった。
1P-p10:寺内(早大)らは、劣化部を有するNI-REBCOコイルで新たな劣化部が生じた場合や劣化部が拡大した場合にコイル両端電圧に生じる変化について解析結果を報告した。このような場合、
電圧波形に変化を生じるため、電圧を常時監視することで検出ができる可能性を示唆した。
1P-p11:中村(早大)らは、劣化部を有するNI-REBCOコイルを積層したコイルにおいて、運転温度やコイル径が異なる場合の挙動について解析を実施した。温度が高いほど、径が大きいほど
熱暴走は抑制される結果であった。
1P-p12:山川(関学大)らは、REBCO試験コイルのテープ垂直方向に磁場を印加するためのスプリット型REBCOコイルを作製した。作製したコイルを液体窒素中で評価し、解析と一致するI-V特性
が得られ、劣化がないことが確認された。今後は液体水素中で通電試験を実施するとのことである。


HTS交流特性 1P-p13-15 座長 寺尾 悠

本セッションでは合計3件のポスター発表があった。
鹿児島大の永山(1p-13)らは、ピックアップコイル法による交流損失測定の精度向上のため、検出コイルやキャンセルコイルの最適配置や最適形状に関して検討を行い、見かけの損失である
キャンセル残りを低減した結果を発表した。
鹿児島大の野木(1p-14)らは、パワーエレクトロニクス機器(搬送システム用リニアスイッチトリラクタンスモータ)への適用を前提として、インバータで発生する高調波による超電導コイル
の交流損失の解析及び実測を行った結果を発表した。そして高調波成分による交流損失増加分は、高調波電流振幅の概ね2乗、高調波周波数の概ね1.5乗にそれぞれ比例することを示した。
 東北大の土屋(1p-15)らは、ワイヤレス給電・電力伝送等を目的とする機器への搭載を目的とした非超電導PrBCOバッファ層上に成膜したYBCO薄膜による超電導ダイオードでの100 MHz帯の
交流信号に対する整流効果を測定し、80 MHzの電流振幅2.4 A以上の交流入力信号に対して、最大1 mV/cmの直流出力電圧が得られた成果を発表した。





6月21日(火)
A会場

HTS臨界電流特性 2A-a01-04 座長 松本 明善

「2A-a01:宮本(青学大)」はBi,Pb2223線材において仕込み金属組成を変えた線材の試作を行い、その特性変化について報告を行った。金属仕込み組成の最適化を行い、長尺用として比較的
大きい炉内において数ターン巻線を行った長尺線材の熱処理を行ったことを報告した。
「2A-a02:加藤(東理大)」はBi2212単結晶におけるJc向上のために酸素ドープ量の依存性について系統的に研究を行った。低温域と高温域においてはJcのドープ量依存性は異なり、高温
においてはTallonらの指摘による異方性とドープ量の関係で説明が可能であり、一方で、低温部においては磁束ピニングによって説明を試みる報告を行った。
「2A-a03:岡田(東北大)」はPre-tensionを変えたBi2223線材における臨界電流密度の歪特性について報告を行った。100μm厚のNi補強材に対してpre-tensionを系統的に変えた試料を用いて
測定を行った。その結果、pre-tensionを95 N印加した試料においては東北大で導入を目指す33T無冷媒マグネットへの線材候補になりうると報告した。質問では厚みが増加する分Jeが下がるため
マグネット設計への適用可能性も今後検討してほしいとの指摘もあった。
「2A-a04:長村(応用科研)」は臨界電流の曲げ歪依存性測定方法の改善についての報告を行った。従来からの手法で、曲げ歪依存性を調べる際に3点(4点)曲げが用いられてきた。これらの
手法は曲げ半径が、曲げ点からの距離に依存して変化することが問題である。一方、半円治具を用いると曲げ半径は一様になり、評価が行いやすく正確になる。コイルの歪特性等を調べる手法
としては優れていることを報告し、今後治具作製に向けて研究を行うことを報告した。


送電ケーブル 2A-a05-11 座長 大屋 正義

2A-a05:山口(九工大)らは、縦磁界効果を応用したREBCOケーブルの通電特性について報告した。シールド層が形成する磁場を模擬した外部磁場下で2層ケーブルのIcを検証した結果、
自己磁場下と比較して数%のIc向上が確認された。今後さらに多層化したケーブルで検証を行う。
2A-a06:東川(九大)らは、電力変動補償機能を有する超電導ケーブルの開発状況を報告した。CORC導体をソレノイドコイル状に巻いたケーブルを試作して健全性を確認した。また、2回線
を共巻したケーブルを用いて回線間で電力の受け渡しが可能なことをシミュレーションにより確認した。
2A-a07:神田(中部大)らは、航空機用BSCCO積層導体の曲げとねじりに対するIc維持特性について報告した。2枚積層した導体をR60 mmで曲げながら90°捩じってもIcは低下しなかった。
2A-a08:山口(中部大)らは、HTS線材の短絡電流試験結果について報告した。直流系統における短絡電流条件について検討した後、REBCOやBSCCO線材に臨界電流の10倍ほどの電流を
1ms流したが、顕著なIc低下は確認されなかった。
2A-a09:筑本(中部大)らは、石狩500 mケーブルシステムの再冷却・通電試験結果について報告した。約5年ぶりの試験であったが、ケーブルIc、C・tanδ測定、絶縁抵抗試験で良好な結果を
得た。今後は、データセンター容量に合わせた低コストな運用方法を検討して連系試験を目指す。
2A-a10:渡邉(中部大)らは、石狩500 mケーブルシステムの冷却循環試験結果について報告した。真空引きによりケーブルや端末の真空度は復帰したが、冷却後の熱侵入測定で侵入熱量の
増加が確認された。圧力損失測定結果は以前と同等であった。
2A-a11:佐藤(千葉大)らは、三相同軸高温超電導ケーブルの交流損失解析結果について報告した。外層では単相通電時よりも三相通電時の方が交流損失は小さく、内層が作る磁界が外層の
損失を低減することを確認した。また相間距離を狭めるほど損失低減効果が大きいことを確認した。


6月21日(火)
B会場

MgB2 2B-a01-04 座長 小田部 荘司

4件の発表がすべて会場で行なわれた。oViceによるハイブリッドの実施は問題なく行なわれた。
2B-a01: 田中(日立)らは変動磁場用のMgB2線材を開発しており、今回は51芯で30 μm、まで細くすることに成功した。しかし臨界電流密度も減少してしまっている。
2B-a02: 熊倉(NIMS)らはIMD法によってMgB2の7芯線をつくり、最終的に数百mTを発生することのできるソレノイドを製作した。溝ロール圧延加工をすると断面が四角形になってしまいフィラメント
が破れてしまうため、これを省くことによりフィラメントの健全性を保った。
2B-a03: 山﨑(京大)らはMgB2薄膜の後アニールにより臨界電流密度が向上する際のアニール時間に注目してその結果を報告した。1秒から60分までアニール時間を変えたが、臨界電流密度の結果は
ほとんど変らず、昇温時間が1時間ほどかかることから、最高温度か昇温時間が原因と考えられる。
2B-a04: 井上(福工大)らはX線CTで撮影したMgB2多芯線の画像処理を行ない、内側のフィラメントがより変形していることを統計的に示すことに成功した。いわゆるソーセージングが起きていると
考えられる。


バルク着磁・応用 2B-a05-10 座長 元木 貴則

本セッションでは、6件の発表が行われた。
2B-a05:竹村(芝浦工大)らは、ErBCOを接合材としたGdBCO溶融凝固バルク間の超伝導接合を行い、パルス着磁への影響について報告した。良好な超伝導接合バルクの作製に成功しており、
このような接合体はパルス磁場の侵入が等方的ではなくなることで発熱の影響が分散され、より高い磁場を捕捉可能であることが示された。
2B-a06:箱石(岩手大)らは、Spark Plasma Sintering (SPS)法により緻密化した前駆体からGdBCO溶融凝固バルクを育成し、その捕捉磁場特性について報告した。残念ながら高密度化バルクでは
捕捉磁場は低下する傾向にあるが、機械強度改善が見込まれる本手法による高捕捉磁場バルクの育成手法の確立が期待される。
2B-a07:横山(足利大)らは、パルス着磁時に用いるヨークの材質や形状を様々に変えた際の捕捉磁場特性についてのシミュレーションを行い実測値と比較して報告した。絶対値として差は
見られるものの、最大捕捉磁場の傾向については定性的によく一致しており、数値解析の有用性を実証した。
2B-a08:吉田(岩手大)らは、MgB2バルクのパルス着磁時に無酸素銅板が捕捉磁場特性に与える影響について解析を行い報告した。ロングパルス化の効果が期待されるが、銅板の発熱がバルク
に伝播する影響も考慮する必要があり、バルクとの熱伝導率をできるだけ低くすることが重要であると報告した。
2B-a09:池田(東京農工大)らは、Magnesium Vapor Transport(MVT)法を用いた高密度MgB2バルクの着磁特性およびその電磁界モデリングについて報告した。従来の一般的なin-situ法に比べて、
大きく改善した捕捉磁場特性を示すバルクが得られており、解析からもMVTバルク内では高Jc領域が広く分布することを示した。
2B-a10:紀井(京大)らは、組織の不均一性の小さいMgB2バルクを複数積層したアンジュレーターを作製し、ビーム軸に沿った磁場分布を報告した。ばらつきの小さいバルクを用いることで、
4%以下と非常に均一度の高い周期磁場の発生に成功した。今後のMgB2やREBCOバルクを用いたアンジュレーター開発の進展が期待される。



6月21日(火)
C会場

医療用加速器 2C-a01-04 座長 鈴木 研人

本セッションの発表は全て科研費基盤S「18H05244」による助成で進められている核医学装置開発にむけたHTSスケルトンコイル開発に関する講演で、登壇者も全員が錚々たる顔ぶれであった。
以下各講演のサマリーである。
「2C-a01:石山(早大)」 本講演ではHTSスケルトンコイルの全体スケジュールとこれまでの基盤技術開発状況について簡単な説明があった。また、今年度は研究計画最後の年度となるが、締め
くくりとして小型実証機USBC(Ultra-Baby Skeleton Cyclroton)の開発及び実証実験を行っているとの報告がなされた。
「2C-a02:石山(早大)」 本講演では引き続きUSBCに関して要求される仕様・設計指針について説明があった後、製作について報告がなされた。
「2C-a03:野口(北大)」 本講演では引き続きUSBCの設計に関する報告であるが、ビーム光学の観点から要求される磁場精度達成にむけたコイル設計について説明がなされた。スパイラルな
磁場を実現するためにフラッターと呼ばれる値が重要な設計変数となるが、R&Dの過程で幾度と変更する事となったもののようやく収束点が見つかったとの報告であった。
「2C-a04:植田(岡山大)」 本講演ではHTSスケルトンサイクロトロン製作において懸念事項となる遮蔽電流が及ぼす磁場精度への影響、また電磁応力に関する研究結果の報告がなされた。
結果として、遮蔽電流は磁場精度に大きな影響は及ぼさず、また電磁応力についても許容範囲である旨が報告された。


磁気分離(1) 2C-a05-09 座長 秋山 庸子

磁気力および電磁力を利用した基礎・応用研究に関する5件の発表が行われた。
2C-a05:酒井(宇都宮大)の発表では、磁化メタン発酵法を用いた水処理プロセスの余剰汚泥抑制について、実用を視野に入れた検討の報告がなされた。水温や分離装置の規模、メタン取り
出しに向けた課題についての議論が行われた。
2C-a06:西嶋(福井工大)の発表では、電磁力を利用したマイクロプラスチックの分離の陸上養殖場への応用可能性について報告された。粒径による軌跡の違いについて、また塩素発生の影響
についての質疑があった。
2C-a07:三島(福井工大)の発表では、原子炉の冷却水中に生成する腐食生成物の高勾配磁気分離について報告された。pHと捕捉率の関係、回収した粒子の処理方法、放射線被ばくと目標
分離率の関係について質疑が行われた。
2C-a08:長濱(福井工大)の発表では、淘汰管を用いた常磁性体分離によって粒子を高度に分離する手法について報告された。実用的な装置での粒子の分離・回収方法、高精度に分離する
必要性について議論がなされた。
2C-a09:赤澤(神戸大)の発表では、ローレンツ力を利用した海水・油分離装置中の不導体に作用する力についての理論的検証について報告された。形状の影響、電場と磁場の流体に対する
影響について議論がなされた。
互いに近い研究をしている研究者も多く、掘り下げた議論が行われた。また実用に向けての課題や目標に関する議論も多く行われ、実りの多い内容であった。




6月21日(火)
P会場 ポスターセッションII

超電導・低抵抗接続(2) 2P-p01-03 座長 恩知 太紀

2P-p01:井上(NIMS)の発表では、Bi2223線材とNb-Ti線材のBi-Pbはんだ接合に関する報告で、接合温度が200℃以下で接合することで、接合抵抗を低減することができる。また、目標となる
接合抵抗0.1 nΩを達成するには接合長42 cmが必要。接合長に関する質疑から、現状ではマグネット情報に設置できないため、接合部をリング状に巻いて、10 cm角程度の接合部を製作して、
コンパクト化を図っているとのことであった。
2P-p02:阿竹(東北大)の発表では、コンタクトプローブCTL法によるREBCO線材内部の層間抵抗の臨界温度までの温度依存性について報告があり、転流距離が温度変化することから、Ag/REBCO
界面付近のREBCOに酸素欠乏によるTcの分布があることが原因ではないかと考えられていた。今後は、加熱による酸素拡散を促進させた線材での評価を予定しているとのことであった。
2P-p03:加藤(中部大)の報告では、REBCO線材の低抵抗接続法の検討として、拡散法に依る接合において、熱プレス機を用いた方法と、管状電気炉を使用した方法が報告されており、70 nΩcm2
と低い値を示すものもあるが、ばらつきがあり、接合過程での超電導/安定化層の界面での劣化を示唆していた。今後は劣化の原因の特定など実施する予定とのことであった。


超電導応用(2) 2P-p04-09 座長 福井 聡

2P-p04 :関学大・三菱電機のグループから、NEDO事業で進めている600 MW級超電導発電機の界磁コイル用導体設計に用いるための基礎データとして、基板や銅メッキ厚の異なる複数の
REBCO線材を用いてスパイラル試験を行い、フォーマ径やスパイラルピッチに対する臨界電流の維持率の評価結果が報告された。
2P-p05 :東大・JAXAのグループから、全超電導回転機において、固定子と回転子のエアギャップ中に希薄ガスを充填し、固定子を冷却するための冷媒からの伝導冷却によって回転子を冷却
する方法について、数値解析及び実験により冷却特性を検討した結果が報告された。
2P-p06 :東大・岡山大のグループから、リング状のYBCOバルクと永久磁石で構成された超電導磁気軸受について、H-φ法とA-V法を組み合わせた有限要素法解析に基づいて、回転損失等に
関する検討結果が報告された。
2P-p07 :早大のグループから、SMESに複数の無絶縁 REBCO 線材を集合導体化して巻線したコイルを用いる方法に着目し、バンドルNIコイルに局所劣化が生じた時のバンドル導体内の電流
分布と貯蔵効率への影響について数値解析を行った結果が報告された。
2P-p08 :北大のグループから、磁気誘導型ドラッグデリバリーシステムの磁場装置に関して、HTSコイルと径方向のスリットを持つHTS円筒を同軸上に配置した磁場発生装置を用いて、磁場
発生装置上部にバルク磁石より大きい磁束密度勾配を作る方法についての検討結果が報告された。
2P-p09 :福岡工大のグループから、公開講座等で利用できる小型の超電導モーターカー作製の概要及び低温工学・超電導学会主催の市民公開講座(2021年11月)への出展時の様子が報告された。


加速器(1)/核融合(1) 2P-p10-12 座長 菅野 未知央

2P-p10:REBCO線材と高純度アルミシートを積層し、アルミ合金ジャケット内に挿入したFAIR導体の製作、通電特性評価について報告された。曲げ特性向上のために導体直径を12 mmから
6 mmに縮小した導体について、導体製作中のIc低下が従来寸法と同様の2割程度に留まっていることが確認された。
2P-p11:重粒子線回転ガントリーの軽量化を目的とした鉄ヨークを使用しないアクティブシールド型超伝導マグネットの設計研究について報告された。磁場精度、機械設計ともに要求を満たす
ことが確認された。
2P-p12:医療用高温超伝導サイクロトロンにおける遮蔽電流の磁場への影響を数値計算により評価した。オーバーシュート法を採用することにより、遮蔽電流による誤差磁場の理想磁場に対する
影響を小さく抑えられること、また、磁場の時間安定性の向上にも有効であることが確認された。


磁気分離(2) 2P-p13-14 座長 横山 和哉

2P-p13:猪瀬(宇都宮大)らは磁化メタン発酵法を活用した生物学的水処理法について、ベンチスケールにおける実験、効率・コスト等の計算を行い、栃木県の上乗せ排出基準を達成す
るとともに、カーボンニュートラル化の可能性を示した。
2P-p14:日野口(宇都宮大)らは磁化活性汚泥法の問題である平衡汚泥量を下げることを目的として、汚泥の自己消化及び乾式酸化に磁気分離を活用することにより、時間やエネルギーを
大幅に節約できることを明らかにした。




6月22日(水)
A会場

安定性・保護(2) 3A-a01-05 座長 曽我部 友輔

3A-a01: 小髙(北大)らは、バンドル導体で巻かれた無絶縁REBCOパンケーキコイルにおける電流分布および安定性に関する数値解析による評価を行った。励磁遅れの改善という視点では
バンドル枚数は多い方がよいが、安定性に関しては必ずしもバンドル枚数が多い方がよいわけではないと報告された。
3A-a02: 間藤(北大)らは、LFAC法と呼ばれる無絶縁REBCOコイルのターン間接触抵抗測定手法に関し、数値解析と実験結果を比較することによって測定手法の妥当性を検証した。無絶縁
REBCOコイルに交流電流を入力した場合の、コイル内部の複雑な電流分布を明らかにし、実験結果から正しくターン間接触抵抗を計算する簡便な方法が求められる。
3A-a03: 井上(岡山大)らは、無絶縁REBCOコイルの層間接触抵抗測定に用いられるLFAC法における入力電流の周波数の適切な決定方法に関しての議論がなされた。提案する方法によって
決定した周波数を用い、接触抵抗率が異なる複数のコイルを対象とした実験において、高精度に接触抵抗率を測ることができる可能性を示唆した点で、興味深い結果といえる。
3A-a04: 仲田(千葉大)らは、局所劣化を有する無絶縁コイルにおいて不均一な接触抵抗率が熱的挙動に与える影響を数値計算によって調査した。層間接触抵抗が10 mΩcm2を超える
ような極めて接触状態が悪い条件においては、劣化部における発熱が増大し熱暴走に至る可能性が示唆された。
3A-a05: 今川(NIFS)らは、熱暴走限界の設計予測を可能にするため、Bi2223コイルの液体窒素中の熱暴走に関する数値解析モデルを構築した。n値の負荷率依存性を関数として解析モデル
に組み込み、パラメータを適切に設定することによって、計算値と実験値がよく一致するようになることが報告された。また、熱暴走限界の計算値は、周方向一様を仮定した場合、実験値
よりも高くなることが示された。


HTSコイル・解析 3A-a06-10 座長 柳澤 吉紀

3A-a06:曽我部(京大)らは、銅分流層複合マルチフィラメント薄膜HTS線材の動的抵抗(外部交流磁界による損失に対応した抵抗)の測定結果を報告した。直線的な線材試料と、スパイラル
化した試料の比較をし、後者ではマルチフィラメント化による動的抵抗の低減されていることが示された。
3A-a07:野口(北大)らは、超高磁場REBCO内挿コイルにおいて、励磁時の誘導電圧が予測値より大きくなる現象について、解析を通して考察した。定性的な説明可能性が得られたが、実測値
ほどの電圧発生は得られなかった。解明に向け、より詳細な解析の必要性が提示され、他研究グループからの報告の要望も示された。
3A-a08:松本(千葉大)らは、2 T伝導冷却HTS MRI磁石の遮蔽電流磁場解析の結果を報告した。COMSOLを使い、T-A法で解析した。運転負荷率と、遮蔽電流磁場の減衰の関係が示された。
3A-a09:阿部(KEK)らは、ミューオニウムの超微細構造の精密測定(MuSEUM)に再利用する全身MRI磁石について、超良好均一度(±0.1 ppm)を得るための鉄シムの改良方法論・設計と試行
結果を報告した。目標均一度を実現した。補正磁場の室温依存性について質疑があった。
3A-a10:猪俣(上智大)らは、先進超電導電力変換システム(ASPCS)に向けた、液体水素(LH2)間接冷却MgB2コイル(ラザフォード導体、ダブルパンケーキ)の通電特性試験をはじめて示した。
運転温度は~20 K。電極発熱に起因したクエンチデータも示された。




6月22日(水)
B会場

ピンニング 3B-a01-04 座長 土屋 雄司

3B-a01:下山(青学大)らは、CuO2面ではなくCuO二重鎖により超伝導性が発現する高酸素欠損Pr247焼結体における非常に弱い磁束ピンニングについて報告した。質疑応答では、
酸素欠損秩序の解明に向けた中性子回折が提案された。今後は異方性解明に向けてc軸配向試料を作製するとした。
3B-a02:吉原(住友電工)らは、FF-MOD法を用いて成膜したClad基板上BZO添加GdBCO長尺線材の均一性及び磁場中特性について報告した。BZOナノ粒子の粒径は7 nm、膜厚は
最大3.5 µmであるとし、20 K、20 Tの最小Icは194 A(4 mm幅)と高い値を報告した。質疑応答では、熱処理は分オーダーであるものの120 mの長尺製造に日オーダーを要するとした。
3B-a03:小澤(青学大)らは、FF-MOD法を用いて成膜したYBCO薄膜のTb, Pr, Ni, Zn置換効果について報告した。質疑応答では、YのPr置換でTcJcの最適ドープ量が一致しない点
について、キャリアドープと不純物濃度のバランスが原因だと説明された。
3B-a04:吉田(名大)らは、VLS法を用いて成膜したYBCO薄膜に対しAuイオン照射によるJc向上について報告した。照射によりナノ粒子状の欠陥が等方的なピン留め中心として導入される
とし、今後は詳細なTEM解析を進めていくとした。


臨界電流測定 3B-a05-07 座長 田中 秀樹

「3B-a05:土屋(東北大)」では、パルス電流を用いた高温超電導線材の強磁場中臨界電流の測定について報告された。主に計測線固定による電圧波形のノイズ対策により、~77 K、~20 T、
~500 AでのIc測定がノイズ3 μV程度で可能となった。
「3B-a06:坂井(名大)」では、パルス電流を用いた高温超電導線材の臨界電流測定に関し、フィードバック回路を用いたパルス電流通電時の電流振動対策が報告された。各回路定数の最適値
を求めREBCO線材に対する100 A級のIc測定でその効果を実証した。今後kA級への大容量化をめざすとのことであった。
「3B-a07:呉(九大)」では、MRIやNMRで必要となる超低電界でのE-J特性評価方法を確立すべく、磁気顕微鏡法(SHPM)と磁気特性測定システム(MPMS)によるピックアップコイル法での
磁化測定が報告された。両者の測定結果は、四端子法の結果と良い整合性が得られ、10-4 V/m~10-11 V/mと幅広い評価が可能となった。





6月22日(水)
C会場

核融合(2) 3C-a01-05 座長 谷貝 剛

最終日の早朝であったが、多くの参加者にお集まり頂き、活発な議論が展開された。
3C-a01:高畑(NIFS)は、24年間に及ぶLHDポロイダルコイルの冷却系の運用について講演し、不純物の循環による管摩擦係数の変化について、長期間運転でしか得られない貴重な知見を示した。
3C-a02:大屋(関学)は、LHDヘリカルコイルのNbTiラザフォード導体で観測されていた常伝導の非対称伝播について、従来の数値解析をリファインすることで、実験データとの良い整合性を得た。
3C-a03:成嶋(NIFS)は、HTSテープをスタックしたWISE導体について、試験サンプル接合部の焼損を紹介し、機械的歪みを最小化する必要性と、常伝導発生時の電流分流路の確保の重要性を示した。
3C-a04:園田(上智)は、JT-60SA電源のスイッチングノイズによるCS層間絶縁について考察し、過渡解析モデルから、絶縁損傷は回避可能との解析結果を報告した。
3C-a05:泊瀬川(QST)は、TFコイルターミナル接合部の電位分布計測結果と接合部劣化分布の数値解析を比較し、室温の接合部評価が有効であることを導いた。オンライン・対面両方で活発な議論が
展開され、ハイブリッドの利点が十分生かされたセッションであった。


加速器(2) 3C-a06-09 座長 泊瀬川 晋

本セッションでは, LHC高輝度アップグレード用超伝導双極磁石をテーマに2件、加速器用HTS マグネットの開発をテーマに2件の発表があった。
「3C-a06: 菅野(KEK)」からは、日立製作所とKEKとの共同製作である7 m級の実証双極磁石の性能評価の報告があった。コイルの支持構造を改良することで、過去のモデル磁石と比較し20 unit
もの磁場精度改善が達成された。
「3C-a07: 鈴木(KEK)」からは、全発表に続き7 m級実証双極磁石の磁場精度評価結果およびクエンチヒーターの動作試験の結果の報告があった。質疑ではクエンチアンテナの構造や設置方法に
関する質問が複数見受けられた。
「3C-a08: 藤田(フジクラ)」からは、REBCO線材を用いたスキュー6極電磁石の試作結果に関する報告があった。0.1 mmという高精度が求められており、エポキシ含浸によるコイル寸法調整が
試みられているが、現状検討の余地があるとのことだった。
「3C-a09: 川合(KEK)」からは、伝導冷却HTSマグネット用の小型冷凍システムの開発に関する報告があった。無通電のHTSコイルの冷却試験を行った結果、現状概ね想定通りの性能が確認されて
いるとのことであった。質疑では、パルス管冷凍機を使用してはとのコメントに対し、実機では使用を検討しているとの回答があった。